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「夜明け前」と畳みいわしととろろ汁

2018/09/10 13:00 晩ごはん お酒・おつまみ テーブルウェア

「夜明け前」 第一部上 第一章 一 より

《酒のさかな。胡瓜もみに青紫蘇。枝豆。到来物の畳みいわし。それに茄子の新漬け。飯の時にとろろ汁。すべてお玉の手料理の物で、金兵衛は夕飯に吉左衛門を招いた。》

できることなら7月に作りたかった。しかし泉銀(魚屋)にも大手スーパーを幾つかまわってもないのだ。畳みいわしがなきゃ、成り立たない夕飯。

9月に入った最初の週末。今日は刺身にしようというので泉銀へ行ったら「わわわ!あった!」ので畳みいわしを買えた。「この前探してたでしょ。それで入れたの」と大将。これで「夜明け前」の夕飯が味わえる。


夏の初めだった。盃を傾けながら「島崎藤村の『夜明け前』に出てくる夕飯の肴が、質素なんだよ。畳みいわしと枝豆と青紫蘇なんだ」と夫が言う。「えっ?畳みいわし、いいんじゃない?私、大好きだし」と答える。

所謂名作を読み直している夫。私は島崎藤村の「夜明け前」は高校の現国に載っていた《木曽路はすべて山の中である。》という序の章の一部しか記憶にはない。

俄然その献立とやらを作ってみたくなったので図書館で借りてきてぱらぱらページをめくる。

なんだ。とろろ汁が〆の酒の肴じゃないですか。素晴らしい献立だ。

9月9日 重陽の節句。夏も終わるころ、その夕飯の献立を作る。まずは器を決めることから始める。

《夕飯。お玉は膳を運んできた。ほんの有り合わせの手料理ながら、青みのある新しい野菜で膳の上を涼しく見せてある。やがて酒もはじまった。》 

ハレの日の夕飯ではないから、華美ではない器選び。やはりここは江戸後期の器を使いたい。



LEDキャンドルライトを入れた盃とガラスの徳利とグラス、輪島塗の丸盆以外は江戸後期の器。豆皿、四寸皿、なます皿、鉢、蕎麦猪口。箸置きは米俵形。


器を決めたら、あとは麦ごはんの炊飯をセットして、るんるんでちょいと買い物へ行く。夕飯の時間が近づいたらぱぱぱのぱで料理を並べる。火を使ったのは枝豆を茹でるときととろろ汁用の味噌出汁を作るときだけ。野菜を切り、漬物を切り、畳みいわしをあぶる。それだけ。

枝豆。きょうは両端をカットしたい気分。味噌や醤油、豆腐などに使う貴重な大豆を、実が成熟するまえに収穫して食すのだから、なんて贅沢な。ふくよかな味わい。

胡瓜もみ。なすの新漬け。

胡瓜もみだけを食べたこと、長い間なかったなぁと思った。ポテトサラダや酢のものに加えたり、即席漬けだってキャベツといっしょに塩もみして食べる。

この胡瓜もみが想像以上に美味しいのだ。もぎたての胡瓜でもないというのに。

なすの新漬けは、なすのシーズンもそろそろ終わりなので新漬けではないけれど、糠漬けにしてみた。実際はどういう漬物なのかはわからない。

胡瓜との味の対比が面白かったりしていかにも夏野菜の滋味。


到来物の畳みいわし。


到来物という言葉は他に塩烏賊にも使われている。山深い木曾では海産物がどれほど貴重な食べ物だったのかがうかがわれる。駿河湾でとれた鰯の稚魚(しらす)の素干しの畳みいわしの美しいことといったら。

一口大に割って味わう。香ばしいしらすの旨みがひろがる。

青紫蘇。畳みいわしの合間にひょいとつまんで食べるとこれが美味い。

青紫蘇がなくて畳みいわしだけを食べると飽きちゃうね、きっと。青紫蘇で最後までおいしくいただける。


「酒の酔いがまわるのがいつもより早いな」と夫。

ゆったりと冷酒をのむ。静かに時が流れる。


「卵焼き作って下さい」と唐突に夫がいう。「ん?このあととろろ汁があるのに?」「うん、鶏肉の煮たのか焼いたのでもいいけど」。ありまへんって。

夫は甘い卵焼きは食べないので、出汁巻を作って供す。


「どうですか?出汁巻が献立に加わって。感想を一言どうぞ」「嬉しいです」。

飯の時にとろろ汁。

これで「夜明け前」に描かれた夕飯の献立は終わりとなる。とろろ汁はすった大和芋を濃いめの鰹出汁をとって、純米酒をたっぷり加え、アルコールを飛ばしてから信州味噌を溶いた味噌出汁でのばした。味噌出汁でのばしたのは初めてだったけれど、山芋のぴりりとした刺激がまろやかになって、今度からは味噌出汁だわと決めた。


嘉永六年七月。世は幕末。黒船来航の年。主人公青山半蔵の父・吉左衛門が、造り酒屋を営む金兵衛の店座敷の二階で盃を重ねるシーン。

「夜明け前」は木曾馬籠の里を舞台に、島崎藤村の父をモデルにして明治維新前後の動乱期を描いた長編小説であり、主人公青山半蔵が維新という新時代を奔走する中で、彼の理想とことごとく違う新政府に絶望し、発狂し、56歳の生涯を終えるまでを描いた島崎藤村の集大成といえる傑作。

嘉永6年 1853年。2018年から遡ること165年。

最近私が江戸時代江戸時代というからか、孫娘7歳のこんな爆笑エピソード。

いきなり7歳「江戸時代の歌が聴きたい」。ママ「????」と思ったら ”少年時代”  の歌だったそうな・・・。大爆笑^^


夏が過ぎ 風あざみ 誰のあこがれに さまよう

青空に残された 私の心は夏模様


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